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生成AIを学習させない設定はどこにある? ── 無料版・個人プランの既定を複数のサービスで調査してみた

社員が自分のスマホでChatGPTを使い、見積の下書きを作っている。便利なのは分かるが、入れた内容がAIの学習に使われ、いつかよそに出てくるのではないか。「学習させない設定」があると聞いたが、どこにあるのか。無料版でもできるのか。

答えは、まず「どのサービスを、どの契約で使っているか」で大きく変わります。そこで、中小企業が実際に使いそうな21のサービスについて、2026年9月末時点の各社の公式ページを確かめました。調べたのは、無料版・個人プランの既定設定と、学習させない設定の場所です。先に結論を書きます。

生成AIの無料版と有料版の違い、既定で「使う」が半数近くで法人プランは「使わない」が基本

無料版・個人向けプランでは、入力した内容が既定で学習に使われるサービスが半数近くありました。自分でオフにしない限り使われる、という意味です。ChatGPT、Gemini、Perplexity、DeepSeek、Mistral、Meta AIの会話AIがこちらに入ります。Otter.aiやNottaといった文字起こしサービス、AlexaやRay-Ban Metaのようなデバイスも同じでした。Grokは学習に使うことがあり、オフにする設定はありますが、初期設定がオンかは明記されていません。

登録時に自分で選ぶのがClaude。既定で使わないと明記しているのは、Microsoft Copilot(個人版・2026年8月公開の新しいアプリ)、PLAUD、Gemini Notebook(旧NotebookLM)、ZoomのAI機能、Apple Intelligence、Galaxy AIなどです。

法人プランやAPI経由は、調べた範囲でほぼ全社が「学習に使わない」を既定にしていました。ただし、これは「何もしなくても安全」という意味ではありません。管理者が設定で変えられるもの、フィードバックを送った分は扱いが変わるもの、プランによって約束の範囲が違うものもあります。契約するときに、学習の扱いがどこに書いてあるか(利用規約・契約書・管理画面)を一度確かめておくと安心です。

個人プランの有料版(ChatGPT Plus、Google AI Pro、Claude Proなど)は、無料版と同じ扱いでした。つまり「AIに入れると学習される」という不安の大半は、有料か無料かではなく、個人アカウントで使っていることから来ています。

21サービスの一覧(2026年9月末時点)

設定名は、公式ヘルプなどで確認できた表記をそのまま書いています。確認できなかったものは英語名のままにしています。アプリの更新や端末によって、実際の画面と表示が違う場合がありますので、参考としてご確認ください。各設定の下に、参照した各社の公式ページへのリンクを付けています。

サービス無料版・個人プランの既定学習させない設定(場所・設定名)法人・API
ChatGPT(OpenAI)使う設定 > データコントロール >「すべての人のためにモデルを改善する」をオフ
ChatGPT のデータ管理
Business/Enterprise/APIは使わない
Gemini アプリ(Google)使う(18歳以上は既定オン・人によるレビューあり)設定とヘルプ > アクティビティ >「アクティビティの保存」をオフ
Gemini アプリのアクティビティを管理、削除する
Workspace(仕事用アカウント)は使わない
Claude(Anthropic)登録時に選ぶ(既存ユーザー向けの告知画面ではトグルがオンの状態)設定 > プライバシー >「AIモデルの改善を支援する」をオフ
モデル改善のプライバシー設定を変更するにはどうすればよいですか?
Updates to Consumer Terms and Privacy Policy
Team/Enterprise/APIは使わない
Microsoft Copilot(個人版)使わない(2026年8月18日公開の新しいアプリから。旧アプリは既定で使う)─(旧アプリのままなら、プロフィール > プライバシー >「会話アクティビティに関するトレーニング」「音声会話に関するトレーニング」をオフ。アプリを最新にする)
個人向け Microsoft Copilot: アクティビティの履歴
Microsoft 365 Copilot(職場アカウント)は使わない
Grok(xAI)使う場合がある(初期設定がオンかは明記なし。オフにする設定あり)設定 > Data >「Improve the model」をオフ(日本語名は未確認)
Consumer FAQs
法人は使わない
Perplexity使う(「既定で有効」と明記)アカウント > 環境設定 >「AIデータ保持」をオフ
Data Collection at Perplexity
Enterpriseは使わない
DeepSeek使う(匿名化して)設定で「Improve the model for everyone」をオフ(日本語名・場所は未確認)
DeepSeek利用規約
APIの利用規約に学習条項はなく、プライバシーポリシーが適用
Meta AI使う(Meta AIとのやり取りを学習に使うと明記)日本向けには自分のやり取りの学習利用を止める設定がない(第三者から集めた自分の情報についての申請窓口のみ)
Metaによる生成AIモデルの情報の利用について
未確認
Mistral(Vibe・旧Le Chat)使う(「既定でオプトアウトされていない」と明記)設定 > プライバシー(日本語名は未確認)
Can I opt out of my input or output data being used for training?
Enterpriseは使わない
PLAUD(AIボイスレコーダー)使わない(明記)─(オプトインしない限り使わない)
How your data is used in AI processing
プラン差の記載なし
Otter.ai(文字起こし)使う(匿名化して自社AIを学習)オフ設定の記載なし
Otter.ai Privacy Policy
Enterprise Admin Controls Overview
Enterpriseは既定で学習の対象外
Notta(文字起こし)使う(音声認識エンジンの学習に無作為抽出)個人向けのオフ設定は未記載
AI学習について
エンタープライズ/ビジネスPlusは「AI学習なし」
Gemini Notebook(旧NotebookLM)使わない(フィードバックを送った分は確認・学習に使われうる)─
Privacy and Terms of Use in Gemini Notebook
Workspaceは使わない(人による確認の有無はエディションで違う)
ZoomのAI機能(旧AI Companion)使わない(全プラン)─
Zoom Terms of Service(§10.2)
同左
Google Meet メモ(Gemini)使わない(Google AIプランの個人アカウントも、Workspaceも)─
Learn how Gemini in Gmail, Calendar, Chat, Docs, Drive, Sheets, Slides, Meet, Vids & Pics protects your data
同左
Microsoft Teams(M365 Copilot)使わない(法人のみの製品)─
Microsoft Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ
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Apple Intelligence / Siri使わない(改善への協力をオンにした場合のみ。iOS 27からはその場合、基盤モデルの学習にも使われる)設定 > プライバシーとセキュリティ > 解析と改善 >「Siriと音声入力の改善」(iOS 27の英語表示は Improve Siri & Apple Intelligence)
「Siriと音声入力の改善」のオン/オフを切り替える
Turn Improve Siri & Apple Intelligence or Improve Siri & Dictation on or off
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Samsung Galaxy AI使わない(公式声明)「高度なインテリジェンス設定」で端末内だけの処理に切り替えれば外部送信も止められる(正式な日本語の設定名は未確認)
あなたのプライバシーを守る:Galaxy AIが支える安心のデータ管理
未確認
Amazon Alexa / Alexa+使う(やり取りを機械学習モデルのトレーニングに利用と明記)Alexaアプリ > その他 >「Alexaプライバシー」で、音声録音を改善に使うかを管理・録音を保存しない設定も可(保存しない場合も文字記録は30日保存)
Alexa、Echoシリーズ端末及びプライバシーに関するFAQ
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Ray-Ban Meta(AIグラス)使う(音声のやり取りの文字記録を、製品改善のため既定で保存)Meta AIアプリの[設定]で、音声のやり取りのストレージ(文字記録と音声記録)をオフ
AIグラスの音声に関するプライバシー通知
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Google Pixel(通話メモ・レコーダー)使わない(端末内処理)─(レコーダーで「バックアップと同期」をオンにすると、録音はGoogleアカウントに保存される)
電話アプリの通話メモを使用する
Find, back up & manage recordings on your Pixel device
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スマホに入っているAI

最近のスマホには、端末そのものにAIが入っています。

iPhone(Apple Intelligence・Siri)については、Appleが「ユーザーが明示的に協力を選ばない限り、個人データややり取りを基盤モデルの学習に使わない」としています。協力するのは、設定で「Siriと音声入力の改善」をオンにした人だけです。iOS 27(2026年9月)からは、オンにした人の音声や文字起こしが基盤モデルの学習にも使われます。更新時に協力を求められたら、「今はしない」を選べば協力しません。ChatGPTとの連携も既定でオフです。Galaxy(Galaxy AI)については、Samsungが「端末でもクラウドでも個人データを学習に使わない」と公式に述べ、さらにクラウドを使わず端末内だけで処理する設定もあります。Pixelの通話メモやレコーダーは端末内で処理され、Googleには送られません(レコーダーのバックアップをオンにした場合を除く)。

設定をオフにしたあとも知っておきたいこと

学習の設定をオフにすれば、入れた内容が学習に使われることは止められます。そのうえで、知っておくと安心な点があります。

オフにしても、データはしばらく残ります。Geminiは「アクティビティの保存」をオフにしても72時間、ChatGPTやClaudeは削除してから30日は保持されます。不正利用の調査や法的な求めに応じるための仕組みで、メールやクラウドストレージにも同じような保管期間があります。たとえば2025年、OpenAIは報道機関との訴訟で、削除済みのチャットも含めて保全するよう裁判所から命じられました(命令は2025年9月末に解除)。公的な手続きで記録を残す必要があれば、事業者はそれに従います。これはAIに限らず、ほかのサービスでも同じです。

もう1つ、ChatGPTとClaudeは、回答に高評価・低評価のフィードバックを付けると、その会話は設定に関係なく学習に使われることがあると明記しています。気になる内容の会話では、ボタンを押さないでおけば十分です。

「共有リンク」は学習とは別の話

共有リンクで公開された会話が検索結果に載る例が、複数の生成AIサービスで報じられています。現在は各社とも、共有ページが検索に載らないよう対応しています(詳しくは1本目の記事)。

ここで強調したいのは、これはAIの学習のせいではないということです。利用者が「共有」ボタンで作った公開リンクが、検索エンジンに拾われたものでした。今でもリンクを間違った相手に送ったり、SNSに貼ったりすれば、誰でも見られる状態になります。いつも使っている共有ドライブで「リンクを知っている全員」に公開するのと同じで、生成AI特有の問題ではありません(共有リンクを含む漏えいの経路は、生成AIの利用ルールの先に要るもの ── 情報漏えい5つの層で詳しく書いています)。

補足として、誰でも見られるリンクの代わりに、指定したユーザーの範囲で共有する方法もあり、こちらの方が安全かもしれません。たとえばClaudeはメールアドレスで相手を指定して共有でき、ChatGPTの法人プランでは共有リンクを同じワークスペースのメンバーだけが見られます。

いちばん大事なのは、規約で守られていること

オフにしても絶対ではない。では、使わないのが正解なのか。そうではありません。

学習に「使わない」と規約に書いてあれば、それは事業者としての公式な約束で、破れば法的責任に関わります。

私たちはこれまでも、メール、クラウドストレージ、会計ソフト、外部の会社への業務委託を使ってきました。そのどれにも「絶対に漏れない」保証はありません。それでも使ってきたのは、相手の約束(契約・規約)と、それを守ってきた評判を見て選んできたからです。生成AIも、これまでのサービスと同じ考え方で選べます。

判断の材料は2つです。その会社が何を守ると明文で書いているかと、過去に約束を破ったり、知らせずに初期設定を変えたりしていないかです。

たとえばZoomは2023年8月6日ごろ、規約の書き方から「AIに学習させるのでは」と騒ぎになりました。翌7日に「同意なしには使わない」と追記し、11日には「顧客のコンテンツをAIの学習に使わない」と条件なしの表現に改めています。3年たった今も、その一文は規約とプライバシー声明(2026年9月17日更新)で維持されています。一方で、音声アシスタントやAIグラスの中には、やり取りの記録を製品改善のために初期設定で保存するものもあります(Alexa、Ray-Ban Meta。どちらも設定で変えられます)。

どちらが悪いという話ではありません。「便利さのために初期設定で記録を残す会社」と「一度した約束を変えない会社」があり、それを見て選ぶ。これはクラウドや会計ソフトを選ぶときと同じ判断です。

規約に加えて、第三者の認証や監査を受けているかも判断材料になります。たとえばAIボイスレコーダーのPLAUDは、情報セキュリティのISO/IEC 27001、プライバシー保護のISO/IEC 27701、外部監査のSOC 2 Type II(セキュリティ・可用性・機密保持)を取得したと公表し、その書類をTrust Centerで確認できるようにしています。日本のアカウントのデータは、AWSの日本リージョンに置くとも明記しています。認証は、社内の管理の仕組みを外部が確かめたものです。「学習に使わない」こと自体を保証するものではないので、規約とあわせて見るのが基本です。

録音系のサービスでは、もう1つ見るべき点があります。裏で誰のAIに渡しているかです。PLAUDは、文字起こしと要約に外部の大手AI事業者を使い(サポート記事ではOpenAI・Google・Microsoftの3社)、その事業者との契約で「学習に使わない・処理後に保持しない」と取り決めている、と説明しています。Otter.aiはAnthropicとOpenAIを使い、同じく学習には使わないと書いています。表に出ている会社だけでなく、その先の会社まで約束が及んでいるか。製造業の方なら、二次・三次の協力会社の管理と同じ感覚で読めるはずです。

責任は誰にあるか、事業者の約束が守るのは「学習に使わないこと」だけ

ここまで読んで、「では法人プランを契約すれば安心」と思われたかもしれません。半分はそのとおりです。ただ、事業者の約束でカバーされるのは、渡されたものを学習に使わない・勝手に残さない、というところまでにとどまります。何を渡すかを決めたのは、使ったあなたです。

国の「AI事業者ガイドライン」(総務省・経済産業省、第1.2版・2026年3月)は、AIを使う会社を「AI利用者」と呼びます。その責務として挙げられているのは、個人情報を不適切に入力しないこと、機密情報等を不適切に入力しないこと、提供者のサービス規約を遵守することです。義務ではなく指針ですが、入力の判断は利用者側にあるという整理ははっきりしています。

個人情報保護法、取引先との秘密保持契約、社員の行為に対する会社の責任、自社ノウハウの営業秘密としての管理。この4つは、規約の「学習に使わない」がどれも肩代わりしてくれない領域です(EUのAI法や海外の考え方と合わせて、次の記事で書きます)。だから、判断の責任は使う側にあると最初に自覚しておくことが、いちばん効果のある対策です。

会社としてどう見るか、4つの確認

  1. 会社のアカウントで使う。 個人プランは「既定で使う」が半数近く、法人プランは「使わない」が基本。社員の私物アカウントを禁止するより、会社のアカウントを用意するほうが、結果として守られます。全員分でなくても、まず業務でよく使う人の分からで十分です
  2. 個人プランを使うなら、設定をそろえて記録する。 上の表の設定をオフにし、いつ誰が確認したかを1行残す。設定名は変わるので、半年に1回は見直す
  3. 録音・文字起こしは、3つを聞く。 ①自社の学習に使うか ②裏でどのAIに渡し、そこは学習に使わないか ③データをどの国に置くか。この3つに公式ページで答えられるサービスは、実は多くありません
  4. 何を入れるかは、サービス側ではなく自社側で決める。 表がどうであれ、取引先から預かった図面や従業員の個人情報を入れてよいかは、サービス側ではなく自社で判断することです

おわりに

「学習に使われるかどうか」は、調べれば今日の答えが出ます。ただ、その答えは来月変わるかもしれません。変わっても困らないのは、会社のアカウントで、何を入れるかを自分で決めたうえで使っている会社です。

何を見ればいいかは、会社の業務や扱う情報によって変わります。国のガイドラインや各社の規約を手がかりに「何を見るか」の骨格を用意し、それを自社の情報と業務で埋めていけば、「これは会社のアカウントで」「これは入れない」を判断できる表になります。私たちも、この骨格づくりと埋める作業をお手伝いしています。

参考文献

公開情報(2026年9月24日・10月2日取得)。表の「根拠」に挙げたページのほか、本文で参照したもの。

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